インテリジェンス
カール・フォン・クラウゼヴィッツは『戦争論』において、戦争の本旨とは、暴力による強要であり、戦争を行う機関である軍隊は暴力を管理する組織と述べている。またマックス・ウェーバーの、国家とはある領域での合法的な暴力行使を独占する集団、として定義する考えの中にも、軍隊がこの合法的な暴力の行使を担当する組織、という意味が含まれていることになる。これら思想に見られるように軍隊は物理的な強制・加害行為をなしうる執行機関であり、国家権力の主要な権力資源である。このような軍隊の存在意義についての議論は古く古代ギリシアにまでさかのぼることができる。古代ギリシアの哲学者プラトンは国家の独立を維持するためには国の自足性が重要だと考えており、外国に軍事力や経済力で依存することはその国と従属関係を結ぶことになると論じ、国家が独自的な軍事力を持つことの必要性を説いている。この考え方は近世ヨーロッパのニッコロ・マキャヴェッリにも通じており、彼は自国民から編制された常備軍のみが信頼に足る国防力となり、外国軍や傭兵に依存した国の惰弱さを論じている。
軍隊の機能は大きく分けて武力の執行と武力による抑止という二点が挙げられる。武力の執行は「敵」と設定された相手を直接的に加害行為することであり、これは軍隊という組織の基本的な存在意義でもある。この武力の執行の政治的な意義は国家の目的達成に寄与することであり、侵略や防衛などの安全保障政策のために運用される。敵の撃滅は軍事的合理性の上で行われる限りは戦時国際法により認められるが、この場合の敵とはすなわち交戦者資格を持つ敵軍であり、民間人や民用物に対する加害行為は認められていない。第二に上記の能力が持つ可能性によって「敵」からの侵略などの軍事行動を抑止することである。この武力による抑止は古来より存在していたが、体系的に理解されたのは米国と旧ソ連が核兵器を相互に配備した冷戦期であり、また国際関係において軍隊は国家の政治意思を反映したプレゼンスやパフォーマンスとしても機能している。以上のように物理的で具体的な暴力行為を行うこと、あるいはそれを行う潜在力があることにより対外的に抑止を行うことである。(軍事力の項目も参照されたい)
自己完結性とは軍隊が食料・電気・通信・移動などの生存ひいては作戦行動の遂行に必要なインフラを自分たちで用意する能力である。軍事施設には武器弾薬、発電施設や通信施設などが常に維持・保管されており、一定の自己完結性を維持している。これは戦争においてインフラが破壊された地域、またインフラが元々無い地域で作戦行動をすることもあることを想定しているためである。インフラが破壊され、消防が活動できなくなる大規模災害において軍隊が有用な理由はここにある。さらに軍隊では部隊の構成員や物品が不足した場合を考慮し、その能力を代替できるように準備がなされている。これは殊に指揮系統の維持は統率上の観点からも最重要とされる。
用兵とは作戦・戦闘を遂行するために戦力を運用することであり、軍隊の最も根本的な能力である。軍隊の持つ多用な能力も原則的にこの機能に寄与するためにある。戦力の運用は、個々の兵員の練成された体力と共に武器、爆発物、通信機器、戦術行動、緊急医療、築城などの戦闘技術が求められ、また部隊レベルでは作戦行動の連携を維持するための指揮統率、後方支援などを担当する基本的な能力が求められる。これらの総力が戦闘力となり、司令部の情報活動、戦略・戦術、意思決定が軍隊の作戦行動を実施させて作戦用兵の機能を果たす。この活動は陸海空で細部が異なっており、別個に高度な専門技能と知識が求められるために
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と並立している。
練兵とは軍隊の構成員である兵員の育成であり、軍隊の重要な能力の一つである。軍隊の構成員も礼式など基本的な事項を別として階級や部署によって役割が異なるために別の教育訓練を受ける必要がある。例えば部隊の作戦に携わる士官には精神教育、戦術学教育、一般
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などが教育訓練される。軍隊の中でも現場に携わる下士官は軍隊の骨格であり、精神教育、身体訓練、装備の取扱い、サバイバル技術などのより発展的な戦闘技術などが教育訓練される。また士官と下士官は共に兵とは異なって部下を統率するためにリーダーシップも教育される。兵卒はその精神教育、身体訓練、基本教練、装備の取扱い、射撃術、築城技術などの教育訓練を受ける。教育訓練は兵科によっても大きく異なる。
造兵とは武器・兵器の研究・開発・生産であり、軍隊の主要な能力の一つである。この造兵の機能は一般的な科学技術と関連して軍事技術の水準を向上させ、兵員により優れた装備を提供する上で非常に重要である。とくに海軍や空軍では戦力の兵器性能への依存度がより高く、兵器開発が戦力の質に決定的に影響しうる。その内容はさまざまであるが、例えば軍用車両に用いられる装甲技術は兵士の生存性に直結し、航空機に用いられる航空工学・材料工学などの研究、ミサイル技術や通信技術などは戦闘の行方そのものを左右しえる重大な要因である。特に近年は他国との技術開発の競争があり、軍事技術が陳腐化しないためにも継続的な研究開発が進められている。
軍隊は複数の部隊から成る組織体である。まずその機能から軍政機関と軍令機関に大別できる。軍政機関とは軍事行政を管轄する機関であり、軍事力の維持に関する予算編成、軍需品の調達、部隊の編制等の業務を担当する。軍令機関とは軍事命令を管轄する機関であり、軍事力の運用に関する作戦指揮を行う。
現代の軍隊はしばしばその高度な専門性から政治とは切り離され、
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である職業軍人により組織されているが、軍事的行動は文民政治家によって統制されるという文民統制の体制に置かれていることが多い。本来その目的は近世まで続いてきた政治家(王や貴族)による軍隊の直接統制を廃止し、軍人と政治家を切り離すことで政治が軍事に過剰に干渉せず、軍人がより専門化を推し進める体制を整えることにあった。また、議会制民主主義の浸透により、軍隊が政治の動向とは無関係に行動することを監督する機能もでてきた。そのため今日、軍隊の指揮系統の最上部にあたる最高指揮官はプロフェッショナルの政治家である国家元首や国防相である場合が多い(文民統制を参照)。
幕僚機関とは指揮官の指揮を専門的な立場から補佐する幕僚により構成される機関である。参謀機関は最高指揮官から軍団、師団、連隊等の高級部隊の指揮官の下にも設置されており、幕僚長を中心に作戦幕僚、情報幕僚、兵站幕僚、人事幕僚、計画幕僚等の一般幕僚を
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として複数の幕僚から構成される合議制の組織である。作戦部隊(Line)とは別の機関であり、指揮官の指揮下にのみ入っていて部隊の指揮権を持たない。ただし指揮官の決心を実行するために指揮官の代理者として部隊に命令を下す権限を持っている。参謀機関は戦時においては情報活動、戦術研究、作戦計画び立案などの活動を行い、指揮官の意思決定を補助する。19世紀に生まれたこの幕僚の制度は現代の軍隊では広く採用されている。